後発事象のハナシ

こんにちは、ぱんのすけです。

世間の3月決算の上場企業にとっては、この時期は丁度計算書類の提出と有価証券報告書の提出の間の空白の期間だったりします。この時期になると私は後発事象を思い出します(理由は後述)。

ということで今回は後発事象についてです。

 

目次

 

後発事象とは

後発事象というと、漠然とこんな感じでイメージしている人が多いのではないのではないでしょうか。

「決算日後に大きなイベント起きちゃったせいで翌期の財務諸表に影響出ちゃうから財務諸表の後ろの方に念の為書いておく」

これは半分あってて半分不正解です。

正確には後発事象はこう定義されています。

決算日後に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象(後発事象に関する監査上の取扱いより)

「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況」というのはそれぞれ貸借対照表損益計算書キャッシュ・フロー計算書のことですね。つまり財務諸表のことです。

ここで注意してほしいことは、翌期の財務諸表に影響を及ぼすかどうかは特に言及されていないことです。当期の財務諸表に影響を及ぼす後発事象もあるということなのでしょうか?

後発事象には2種類あった!

実は後発事象には2種類あったのです。

後発事象に関する監査上の取扱いによれば、後発事象は以下の2つに分類されます。

修正後発事象:発生した事象の実質的な原因が決算日現在において既に存在しているため、財務諸表の修正を行う必要がある事象

開示後発事象:発生した事象が翌事業年度以降の財務諸表に影響を及ぼすため、財務諸表に注記を行う必要がある事象

これによると、翌期に影響を及ぼす後発事象は開示後発事象だということがわかりますね!つまり、最初に挙げた後発事象の漠然としたイメージは開示後発事象ということですね。では、修正後発事象とはどういったものなんでしょうか?

見たことがない修正後発事象

修正後発事象の例としてよく挙げられるものが、売上債権の回収可能性の評価についてです。決算日後に得意先が倒産した場合、決算日時点で既に得意先の財政状態が悪化していたという実質的な原因が存在すると考えられることから、貸倒引当金を計上することで当期の財務諸表を修正することがあり得るのです。

私は修正後発事象というものが発生している会社を見たことがありません。それもそのはず、修正後発事象は注記ではなく、財務諸表本表を直接修正するため、外から見てわかるようなシロモノではないのです。後発事象というと開示後発事象を思い浮かべる人が多い所以です。

財務諸表を修正しない修正後発事象

修正後発事象は財務諸表を直接修正することが必要な後発事象だという話をしました。でも実は財務諸表を修正せずに、開示後発事象にように注記をする場合があります。

…何を言っているんだと思われるかもしれませんが、現状の会社法金融商品取引法の制度上そういったことがあり得るのです。

会社法上の計算書類と、金融商品取引法上の有価証券報告書はそれぞれ提出タイミングが異なります。一般的に計算書類の方が先に提出期限が来るため、計算書類と有価証券報告書それぞれの提出日の間には空白の期間が存在します(冒頭で少し触れた件です)。議論となるのは、この期間内に修正後発事象が発生した場合です。

計算書類はもう提出し終えているため、後発事象の議論は生じません。しかし、有価証券報告書はまだ修正の余地があるため、修正後発事象の定義に照らせば、財務諸表を修正することが求められます。しかし、このタイミングで有価証券報告書の数字を修正すると、計算書類の数値との整合性が取れなくなってしまいます。よって、この空白の期間に生じた修正後発事象に限っては、例外的に開示後発事象と同様に注記をし、財務諸表本表の数値を直接修正することはできないのです。

 

まとめ

長々と書いてしまいましたが、結局のところ修正後発事象と開示後発事象の本質的な違いは、発生した実質的な原因が決算日時点で存在しているか否かの違いです。

実質的な原因が決算日時点で存在していれば、当然当期の本表の数字に影響しますし、そうでなければ、翌期の本表の数字に影響するということで、注記をし投資家への情報提供を促すということです。

 

ぱんのすけ