【ファイナンス】モノが高く売れると運転資本が増えてしまう件

こんにちは、ぱんのすけです。
前回運転資金についての解説をしてみました。

free-bushi.hatenablog.com

今日は、前回記事を書いていて個人的に気になったことを書いてみたいと思います。

目次

 

高く売ると運転資金が多く必要になる?

運転資金の公式は以下の通りであることを前回書きました。

 

運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務


ふと疑問に思ったのですが、運転資金の公式を見る限り、売上債権が増えれば運転資金が増えることになりますよね。つまり、高く売れた場合には多くの資金調達をしなければならないということです。…これって意味不明ですよね。果たして本当にそうなんでしょうか?そこで、今回は前回の設例のうち、販売額だけを変えて仕訳の流れを追っていきたいと思います。

前提条件

  • 支払は翌月に行われる
  • 入金は翌々月に行われる
  • 仕入額は100円、販売額は1,000円とする。
  • 販売時の仕訳は分記法で行う(売上勘定を用いずに棚卸資産勘定を直接使う)

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数字はこんな感じですね。
ここで2月時点での運転資金の額を公式に当てはめて考えてみます。

運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務
    =1,000+100-100
    =1,000

2月時点で運転資金として1,000円借りればいいということになりますね!
…ですがちょっと待ってください。これって違和感を覚えませんか?
資金繰りという意味では、翌月に支払うべき100円を工面できれば足りるはずです。
1,000円も資金調達をする必要はないはずです。
なぜこのような結果になってしまうのでしょうか?


運転資金の公式は簡便的な公式だった!


運転資金の公式上の売上債権の意味合いは、「まだ入金がないので、他から資金調達してくることが必要な部分」になります。
言い換えると、売上債権に含まれる利益相当部分は自分の懐に入るお金であるため、資金調達してくることが必要ない部分と言えます。
つまり、より厳密に運転資金を計算するとしたら、
運転資金=(売上債権-(売上債権×利益率))+棚卸資産-仕入債務
    =(1,000-(1,000×90%))+100-100
    =100
といった形で、利益相当分を控除することが正しいはずです。

では、なぜ運転資金の公式では、利益相当分を控除せずに紹介されているケースが多いのでしょうか?


それは、通常は利益率がそこまで高くないことを想定しているからです。
今回の設例では数値を極端にするために、100円で仕入れたものを1,000円で売るというぼったくりのようなビジネスモデルにしてみましたが(利益率90%!)、それが成り立つビジネスはそうそうありませんよね。仮に20円だけ利益を上乗せして販売するケースで(利益率16.67%)、運転資本を計算してみます。

(公式にそのまま当てはめた場合)
運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務
    =120+100-100
    =120

(厳密に計算した場合)
運転資金=(売上債権-(売上債権×利益率))+棚卸資産-仕入債務
    =(120-(120×16.67%))+100-100
    =100

公式にそのまま当てはめた場合、20円多く運転資金が計算されてしまいますが、利益率90%のケースに比べると差額としては大分小さいので、資金調達の意思決定の場面でミスリードを起こすことはなさそうですよね。
よって運転資本の公式は、利益率がそこまで高くないことを前提として、簡便的に運転資金を計算するための公式と言えます。
利益率が極端に高いビジネスモデルの場合には、公式に当てはめて運転資本の計算をすると借りすぎてしまう(=余計な金利を払ってしまう)こともあるかもしれないので、利益相当分を除いた厳密な計算をしてみてもいいのかもしれませんね。

 

ぱんのすけ