リース会計のハナシ(つづき)

こんにちは、IT企業で経理をしている公認会計士ぱんのすけです。

今回はリース会計の続きです。

前回の記事はこちら

目次

前回のおさらい

前回のおさらいです。

会計では法的形式ではなく、経済的実態を重要視する。よって、固定資産をリースした場合には、購入した際と同じように固定資産をBSに載せる必要がある。 

前回、リースは賃貸借取引であるにも関わらず、売買したかのようにBSに計上(オンバランス)する必要があるという話をしました。しかし、全てのリース取引が一律にオンバランスされる訳ではありません。オンバランスする必要があるリースはファイナンス・リースと判定されたもののみです。

ファイナンス・リースとは?

以下がファイナンス・リースの定義です。

リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引(リース会計基準5) 

つまり、固定資産を買った場合と同じように使える場合はファイナンス・リースになるということです。何故ファイナンス(金融)という言葉が出てくるかというと、ファイナンス・リース取引はリース会社から資金を借り入れ、自分でリース物件を購入する取引と同じ経済的実態を有するからです。機能的にリース会社は、固定資産の貸付業というよりも、むしろ金融機関的な性格を有することから、ファイナンス(=金融性)・リースと呼ばれるのです。

ファイナンス・リースと判断されないリース取引、すなわち買った場合と同じように使えないものはオペレーティング・リースとして、固定資産をオンバランスすることをせず、リース料をPLに計上していくことになります。f:id:mildkun:20210103180008p:plain

では、リースの判定フローチャートを見ていきましょう!

判定フローチャート

①フルペイアウトの判定

買った場合と同じように使えるかどうかの判定をフルペイアウトの判定といいます。

2つの観点からの判定を行います。

ⅰ.現在価値基準

リース料総額の現在価値≧見積現金購入価額×90%

「買った場合の金額と同じぐらいのリース料だよね」ということを確かめるための判定式です。リース料が著しく安い場合は、買った場合と比べて固定資産の使用に関して制限が付されていると想定できるため、そのようなリースをはじくための判定式になっています。現在価値とは、将来のリース料の支払額を今時点の価値に換算した金額のことです。詳しくは別の機会に説明します。ここでは、≒リース料総額と捉えてもらって大丈夫です。

ⅱ.経済的耐用年数基準

解約不能リース期間≧経済的耐用年数×75%

こちらは「買った場合の期間と同じぐらいリースするよね」ということを確かめるための判定式です。解約不能リース期間が耐用年数に比べて著しく短い場合には、買った場合と同じように使えるとは言い難いため、そのようなリースをはじくための判定式になっています。

ここで注意して欲しいのが、90%、75%といった量的基準はあくまで「概ね」の基準に過ぎないということです。例えばそれぞれの数値が88%、73%といった場合であっても、実質的にフルペイアウトであると考えられる場合には、ファイナンス・リース取引と判定されることになります。

余談ですが、このような細かい量的基準を会計基準上で規定しているのは、日本基準の特徴であると言えます。現行の制度下では、量的な基準をかいくぐるための恣意的な契約内容が蔓延していることも事実です。国際的には、リースをファイナンス・リース、オペレーティング・リースと分けることなく、全てのリースをオンバランスすることとされています。ここは日本基準下でも改正が進む傾向にあると思われます。

現在価値基準、経済的耐用年数基準いずれかを満たす場合、そのリースはファイナンス・リース取引と判定されます。つまり、BSへのオンバランスが必要になります。

まとめ

今回のまとめは以下の通りです。次回はファイナンス・リースについてさらに深ぼっていきます!